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葉室麟氏の『山月庵茶会記』を読了【本のツボ】
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    評価:
    葉室 麟
    講談社
    ¥ 734
    (2017-04-14)
    コメント:藩を出て茶人となった主人公が16年ぶりに帰郷。そして16年前の出来事を暴いていくという時代ミステリーである。

    葉室麟氏の『山月庵茶会記』を読了。

    タイトルにあるとおり、茶会の話、

    ではない。

    政権争いに敗れた武士が藩を出て

    16年の修行を経て有名な茶人となり、

    いきなり帰郷。

    そして16年前の妻の死の真相を

    暴いていくというミステリである。

     

    茶事たっぷり、お約束たっぷり、

    「なんで16年ぶりに帰郷??」

    と思ったのは作中の藩の人間だけでなく、

    読者もである。

    妻の死の真相を暴く気持ちになるのに

    16年が必要だったと主張されれば

    それまでであるが、

    いささか腑に落ちない。

     

    後半はどんでん返しの連続。

    ひねりも利いていてうなる。

    利き過ぎていて別の意味でもうなる。

    たしかに伏線はあった。

    けれど、むー、いきなり!?

    きっと……序盤ではなく、

    中盤以降について来られない

    読者続出だろうな、と思うのだ。

     

    全体にはいい話なので、

    なんというか、

    なんと言っていいのか困る作品である。

     

    西條奈加氏の『三途の川で落としもの』よんだ【本のツボ】
    0
      評価:
      西條 奈加
      幻冬舎
      ¥ 1,620
      (2013-06-27)
      コメント:読んだのは文庫本であったが、この画像しかなかったので。12歳の少年がとある事情で三途の川に漂い、そこで川守のような連中と仕事をしながら人生を考え直す物語である。奇妙な気持ちにさせられる話であった。

      西條奈加氏の

      『三途の川で落としもの』の文庫版を読了。

      橋から転落して気づいたら三途の川のほとりにいた

      12歳の少年の成長物語である。

       

      正直、突っ込みどころ満載である。

      全体をみればいい話になっている。

      人間界のしがらみについて

      ライトテイストで描かれているし。

      でもどうにも最後までなんとも言えない

      奇妙な違和感があった。

      三途の川に人ならざるものがいるのはいい。

      世界観もファンタジーと割り切ればいい。

      けれど、ファンタジーではない。

      どうも人間界のしがらみを書きたいらしくて。

      そのポリシーは凄いと思うし、

      生き様とかを訴えるのに少年題材は打ってつけだし、

      でも、どうにもチグハグなのである。

       

      これを書いていて気づいた。

      あまりにチャンポンなのだ。

      ちゃんと理由は書かれているけれど、

      だからといって納得できるかどうかは別で。

      ギリシャ神話と歴史小説と

      ファンタジーと現代のいじめ問題、

      あれやらそれやらが、

      わらわらとあり過ぎなのだ。

       

      それでもまとめてあるのが

      西條氏の凄いところだろうけど、

      世界観についていけるひとと

      いけないひとに

      大きく分かれる作品である。

      むむん。

       

      東野圭吾氏『虚ろな十字架』読了【本のツボ】
      0
        評価:
        東野 圭吾
        光文社
        ¥ 691
        (2017-05-11)
        コメント:死刑にまつわる2つの事件の物語。死刑に意味があるのか、幼子を殺害された側と殺害した側、別事件の殺害した側の家族の、事件が交錯する深い物語であった。

        東野圭吾氏の『虚ろな十字架』を読了。

        死刑にまつわる2つの物語である。

        幼子を殺害された夫婦が

        相手を死刑判決まで持ち込む物語に、

        その後それで気持ちは晴れたのかとか、

        さらには数年後、妻を殺害される夫。

        (作中では離婚しているので元夫)。

        死刑とは何か。

        死刑に意味はあるのか。

        それを実に身近に感じさせ、

        深く読み進めさせられた1冊。

         

        なにしろ登場人物、

        おもに被害者は誰にも

        当てはまるパターンという、

        ホラーレベルで怖い物語である。

        娘を愛し、ほんのちょっとの……という

        そんな経験をしない母は

        いないのでは。

        いたらそれで別の問題が生じそう、

        そういう人間社会の複雑さを

        しみじみ盛り込んだ作品である。

         

        死刑とは何か。

        どんな意義が、どんな意味が。

        死刑を求める人たちはわかっている。

        相手を死刑にしたところで

        死んだ愛する者はかえってこない。

        けれど、そのまま社会復帰されるなど……。

        そういう心情だけで動く。

        これまた誰もが共感することであろう。

         

        爽快感はない。

        けれど、やはり、多くの方に読んでいただきたい

        そういう1冊であるのは間違いない。

         

        恩田陸氏の『蜜蜂と遠雷』よんだ【本のツボ】
        0
          評価:
          恩田 陸
          幻冬舎
          ¥ 1,944
          (2016-09-23)
          コメント:直木賞と本屋大賞W受賞の例のアレである。日本で開催された国際ピアノコンクールの予選から本戦まですべてを書き切った物語である。コンテストに参加する者だけでなく、審査員の視線も書いてあるてんこ盛り作品。文句なしの星5つ。

          恩田陸氏の『蜜蜂と遠雷』を読了。

          日本で開催された国際ピアノコンクールの

          予選から本戦まで書き切った物語である。

           

          参加者、審査員、取材者、

          視点てんこ盛りである。

          そのどれもが生き生きとしていて、

          早く次が読みたくて、

          うっかりすると流し読みしてしまいそうになった。

          単行本で、上下二段形式。

          多分、一段方式だと、かなり一段落が短い作風では。

          それがむしろテンポよく読み進められた。

           

          正直恩田氏の作品は今まで苦手であった。

          読了感がさほどよくなかったのもある。

          今回は驚くほどずんずん読み進めてしまった。

           

          さて本作、ピアノコンクールものである。

          小説はあまり知らないけれど、

          コミックでは結構ある。

          どうしても比較してしまったのが

          名作『ピアノの森(一色まこと)』である。

          あれは途中からショパンコンクール一色の

          物語となった。十年以上の連載であった。

           

          比較する意義などないのだけれど、

          それでもついつい比較するのが人情で。

          一番目玉になるのはやはりラスト。

          この2作、ネタバレにはならないと思うが、

          ラストが違う。

          正直、『蜜蜂〜』では、

          ラストちょい手前までものすごく煽っていた、

          そう、本作は「煽り」がすごかったのだ、

          ので、

          ラストどうするか、とドキドキしていた。

           

          書き手としてみると、

          この終わり方は無難である。

          どこからも文句でないし、続編も必要ない。

          作品としてちゃんと楽しく完結している。

           

          それでもきっと多くの読者が思っただろう。

          違ってもよかったのでは。

          むしろそっちを期待していたのにっ。って。

          そうすると、この先を書かなくちゃイケナイのだ。

          どこで終わらせるかという話にもなるのだ。

          だから、あとは読者に委ねるね系なのだ。

          (村上春樹か……)

           

          とはいえ、正直、わたくしもモヤモヤしている。

          えー、とも思う。

          だからいっそ壁を飛び越えた

          『ピアノの森』のほうがよかったなあ、とか

          思っちゃうのである。

          それは2作ともクオリティが桁違いにいいからこそ

          思いつく我儘な願望である。

           

          うん。『蜜蜂と遠雷』、おもしろかったデス。

           

          範乃秋晴氏の『装幀室のおしごと。』よんだ【小説】
          0
            評価:
            範乃 秋晴
            KADOKAWA
            ¥ 680
            (2017-02-25)
            コメント:タイトルどおり、出版社の装幀室のお仕事内容物語である。本の顔となる表紙、それをいかにつくるか、そして売上げを出すか、大変興味深い物語であった。

            範乃秋晴氏の『装幀室のおしごと。』

            を読了。

             

            タイトルどり、装幀室のおしごとのお話である。

            いわゆる表紙である。およびカバーである。

            実に個人的なことではあるが、

            デジタル書籍を入稿するのに、

            わたくし、自分で表紙を作成している。

            ゆえに、大変興味深い内容であった。

            「やっぱ表紙だよね〜」とため息。

            正直、中身などどうでもいいのだ。

            かつて某出版社のお方にそう断言されたのを

            思い出したくらいである。

             

            個人的なことはさておき内容である。

            お仕事モノではあるけれど、

            作者は電撃出身。

            そりゃあもう、読者の気持ちを掴むのに

            大変長けている。

            お約束もちゃんとあり、

            しかも嫌味なくさらりとあり、

            かつテンポがイイ。

             

            正直、主人公は後半までウザかったものの、

            その分、相方のできるイケメンに

            共感し、次に彼が生み出すものを

            ワクワクして待っていた。

            ひょっとしたら彼が主人公だったのか。

            受難が多過ぎる。

            おもに、ヒロインによるのだが。

             

            とにかく、表紙がいかに大事か。

            もちろん今までもわかっていたけれど、

            さらに思い知らされ、

            おかげで、今書いている原稿の

            表紙レイアウトを変えている最中なのだ。

            それくらいの影響力はある。

            関係者各位はぜひ、ご一読をば。

             

            葉室麟氏の『春風伝』よんだ【本のツボ】
            0
              評価:
              葉室 麟
              新潮社
              ¥ 961
              (2015-09-27)
              コメント:高杉晋作のほぼ生涯を、書き切った作品である。読了後は、「読み切ったぜよ!」と言いたくなるほどである。凄まじいスピードで大量のキャラがいて、全員が有名人なので「オールキャスト!」と両手を上げたくなること請け合いである。

              葉室麟氏の『春風伝』を読了。

              比較的、葉室氏の初期方面の作品ですね。

              なんというか……

              エンタメはさておき、史実をとにかく追う的な。

              参考引用文献も多いし、

              己を顧みて教訓の多い作品でござった。

               

              ずばり、

              高杉晋作が主人公の物語、というか

              歴史書である。

              ほぼ、彼の生涯が書いてある。

              もっとも彼は享年28歳なので……とかいっても、

              何しろ幕末である。

              イベントがこれでもかというほどにある。

              随所に著名人が登場。

              出すだけでオシマイということも多い。

              実に濃い人生なのである。

               

              あらためて高杉晋作を知って、

              「ああ……コイツとは友達にはなれないな」

              と思い、

              「幕末だから生きることができた人物だな」

              そうしみじみとした。

              作中で(史実かもしれないが)

              彼はモテモテである。

              男にも女にも。

              男が気構えに同意するのはわかるが、

              女が彼に惚れるのは理解できなかった。

              こんな面倒臭い男、じょーだんじゃない、と

              オトメ心では思うのですが、

              この時代の女性は、

              そういうメンドーな男が美しく見えたのでしょう。

              まあ、……彼氏にするにはいいが、

              旦那にはしたくないタイプというか。

               

              そして、一番の教訓は、

              「たくさん文献を調べたからって」

              「ぜんぶを作中に出さなくてもいんだよ」

              「むしろ出すな、混乱する」

              ということである。

              本作は幕末モノで、大抵の人が知っているから、

              凄まじいキャラ数を出したのだろうが、

              普通の物語でこれをやると、

              モブキャラだらけでなんなのとなる。

               

              ちょうど、個人的に熱いテンションシーンを

              執筆中だったので、

              BGMとしては最高の作品であった。

               

              坂木司氏の『ホリデー・イン』よんだ【本のツボ】
              0
                評価:
                坂木 司
                文藝春秋
                ¥ 594
                (2017-04-07)
                コメント:ホリデーシリーズの番外編。短編集。意外であった。坂木氏はひょっとして短編の名手ではないかと思ったほどである。どれも味わい深く、本編を知らなくても充分堪能できる。

                坂木 司氏の『ホリデー・イン』を読了。

                ホリデーシリーズの番外編である。

                短編集である。

                 

                坂木氏といえば、

                『和菓子のアン』 で特徴づけられるように、

                のど越しがよく、楽しい物語の書き手、

                そういうイメージがある。

                だからその後、デビュー作を拝読して、

                その変遷課程についてかなり驚いたのだが。

                それはさておき。

                本作、ホリデーシリーズを知らなくても

                充分に堪能できる。

                 

                むしろ、前作から時間が空き過ぎて、

                わたくしは人間関係がうろ覚えだったほどである。

                 

                けれど、断言しよう。

                かなり面白い。

                『和菓子のアン』 あたりの、

                やたらのど越しがいい文章、

                けどはっきり言って、ただそれだけ、

                何も残らない、トゲがない、

                そこから脱出している。

                ブラボーである。

                中盤あたりなんて、

                「……やばい。上手い」

                そうつぶやいちゃったほどである。

                 

                なぞ多き覆面作家の坂木氏。

                そののど越しのいい文章、

                題材とするのは日常系ミステリ、

                どこにでもある物語?

                とか思われて倦厭され気味の作家だと思う。

                 

                でも思う。

                妙にもったいぶった文章を書く書き手より、

                素直に面白くのど越しのいい文章の

                どこがイケナイんだ? と。

                 

                次作をわくわくしてまっています。

                 

                大沼紀子氏の『路地裏のほたる食堂』よんだ【本のツボ】
                0
                  評価:
                  大沼 紀子
                  講談社
                  ¥ 810
                  (2016-11-17)
                  コメント:大沼氏の新シリーズである。記憶をもたない店主が子どもは無料で屋台をやっていて、という背景からの、屋台をベースとした日常系ミステリである。前シリーズのマヨパンより読者側を向いていて、かなり面白い。

                  大沼紀子氏の新シリーズ

                  『路地裏のほたる食堂』 を読了。

                  大沼氏の文体は、児童文学を意識してか、

                  キャラの内心セリフとかが過剰に加えて、

                  もったいぶった地の文が、

                  幾分、イラッとさせられ、

                  いったいどこで誰が喋っているのか不明、

                  読者おいてきぼり状態が多かった。

                   

                  今回は違うレーベルからの出版。

                  ゆえにか、地の文がおとなしめなので、

                  かなりすらすらと読み進められる。

                   

                  そこで氏のミステリおよび

                  サスペンス構成力に驚くほどである。

                  マヨパンは正直、

                  途中でなにがどうなったのか

                  わけわかんなくなって、

                  それを読み直すのもイラッとするので

                  もういいや、となっていたが、

                  本シリーズはそれがない。

                  いい、いいぞ、このまま行ってくれ!

                   

                  そうワクワクする。

                   

                  そこかしこに伏線が張ってある。

                  最後まで回収しきれず、

                  残したのか? と最終章後半に入り思うも、

                  次作への伏線となって

                  ちゃんと回収されていた。

                  次作が楽しみである。

                   

                  今月(と言っても月末だが)の仕入本【本のツボ】
                  0

                    まったりと仕入本を読んでいた。

                    さすがに残り少なく(1冊)になったので、

                    気分転換を兼て本屋さんへGO!

                    そして仕入れたのが以下の画像である。

                     

                     

                    バラエティに富んでいる。

                    しかも新旧入り乱れている。

                    わかっているのだが、

                    近所の大型書店では、

                    必ずしも新刊を全面に押し出すわけではない。

                    おかげで拙作もしばらくいたという

                    恩恵をいただいていたので

                    文句はあまり言えないのだが、

                    新刊だけをチェックするときは

                    相当なストレスである。

                     

                    じゃが、こっちも伊達に本屋かよいはしておらず、

                    「これは5年前の作品だな」

                    「これはカバーが変わっただけだな」

                    と即座に判断し、かつ

                    「……こうして昔の本も掘り起こしてくれる」

                    「ありがたい」

                    そう発想転換しているのである。

                    さあさあ。

                    今回の仕入本はあたりかな? どうかな?

                     

                    とりあえず、未読本が少ない心細さは

                    解消されてめでたしめでたし☆彡

                     

                    星3つ以上ならここでご紹介〜。

                    お待ちあれ〜。

                    (個人的に残念だった本の紹介を

                    こきおろすようにするのは趣味じゃないからネ)

                     

                    葉室麟氏の『柚子の花咲く』よんだ【本のツボ】
                    0
                      評価:
                      葉室 麟
                      朝日新聞出版
                      ¥ 713
                      (2013-10-08)
                      コメント:冒頭で殺人事件が発生する時代小説。その被害者の面影と殺害原因について被害者の教え子である主人公が奔走する物語。実に文字どおり走っている。主人公の体力に感心する。そして内容たっぷり。よくこの量におさまったと、素直に感動。終わり方も素敵であった。

                      葉室麟氏の『柚子の花咲く』を読了。

                      もちろん時代小説である。

                      そして葉室氏であるから

                      もちろん舞台は江戸ではない。

                      とはいえ、主人公は江戸詰め帰り直後の藩士。

                      そこで冒頭で起きた殺人事件の被害者が

                      子どもの頃に通っていた郷塾の師であったと知る。

                       

                      師は何者であったか。

                      何をしようとして殺されたのか。

                      それを巡るミステリーであり

                      アクションたっぷり時代物である。

                       

                      そうか。アクション書きたかったら

                      時代小説書けばいいのか、

                      なんて思ったほどである。

                       

                      主人公、最初はこの事件に乗り気ではなかった。

                      けれど、師を取り巻く人々にうながされ、

                      いつしか命がけで真相を探ることに。

                       

                      いつも感心するのですがね、

                      葉室作品は登場人物が多い!

                      それを、最後まで書き切るのですよ。

                      無駄なく。

                      おそらく12〜15万文字であったであろう

                      本作の中で、ここまで多くのイベントが!

                      もうもうびっくりである。

                      お約束も盛りだくさん。

                      恋あり、妬み恨みあり、藩政あり、

                      人情あり、ありありなのである。

                      ゆえに細かいことを言っちゃダメ。

                      「恭平、おまえどんだけ体力あるんだよ」

                      なんて言っちゃダメだから。

                      「場面転換、はやっ」

                      驚くのはもうヤボですよ。

                       

                      読了爽やかな一冊で、

                      葉室氏では久々の星5つなのだ〜。

                       

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